近年、クラウドファンディングや株式投資型クラウドファンディングの普及とともに、“ユーザーが利用するだけでなく投資家としても参加する”という新たな形が注目を集めています。
本記事では、そんな新しい概念として注目される「インベスタマー(Investomer)」の仕組みや、その背景、従来の株式投資との違いについて分かりやすく解説していきます。投資家としてのリターンだけでなく、商品の魅力を体験し応援する喜びが得られる、新時代のユーザー体験とはどのようなものなのでしょうか。
1. インベスタマーとは?
「インベスタマー」は「Investor(投資家)」と「Customer(顧客)」を掛け合わせた造語で、自分が愛用する商品やサービスを提供する企業に、顧客としての立場だけでなく、株主(あるいは出資者)としてもコミットする人々を指します。
- 利用者でありながら投資家でもある:
利用するサービスに対して投資家としての視点を持つため、単なる消費者とは異なり、企業やプロジェクトの成長を積極的に応援しようとする動機が生まれます。 - ファン化・コミュニティ形成:
インベスタマー同士がSNSなどで情報交換をするコミュニティを形成することもあり、商品開発や新サービスのアイデアに関する提案・意見交換が活発に行われます。
2. 背景・概要:なぜ注目されるのか
インベスタマーが注目を集める背景には、以下のような社会的・経済的な変化があります。
- クラウドファンディングの普及
- 個人投資家が小口で資金提供できる手段が増え、応援したい企業やアイデアに直接投資できる環境が整いました。
- コミュニティ型経済の台頭
- 消費者がブランドや企業と「共創」することを求める傾向が強くなり、従来の「買うだけ」の時代から「一緒に成長させる」時代へと変化しています。
- ESGやサステナブル投資の拡大
- 社会的意義や共感できるミッションを持つ企業への投資意欲が高まっており、インベスタマーも“自分たちの未来を作る”投資先として企業を選ぶ傾向があります。
3. 従来の株式投資との違い
インベスタマーは株式投資の一形態と似ていますが、その目的や行動は従来の「利益追求型の株主」とは大きく異なります。
- 目的の違い:
- 従来の株式投資は株価の値上がりや配当を目的とすることが多く、短期的な売買益を狙うケースも少なくありません。
- インベスタマーは企業やサービスを育てることに重きを置き、長期視点での投資や応援、社会的意義の実現を重視します。
- コミュニケーションの頻度・スタイル:
- 従来の株主は年に数回の株主総会や決算発表を見る程度。
- インベスタマーはSNSやオンラインコミュニティを介し、経営陣や他の投資家、ユーザーと日常的に交流し、アイデアやフィードバックを積極的に行います。
- 体験価値の重視:
- 単なる金銭的リターンだけでなく、開発プロセスへの参加や限定オフ会への招待、優待サービスなど、「体験」を通じて特別感を得ることも大きな価値になります。
4. ユーザー体験の変化
インベスタマーとして企業に関わると、投資するだけでは得られない様々なメリットや新鮮な体験が生まれます。
- モノやサービスへの愛着が深まる
- 単なる「消費者」ではなく「共同オーナー」という意識を持つため、愛着が格段にアップ。
- 企業の裏側を知る機会が増える
- 製品開発のプロセスや、経営課題などを知ることで、企業の苦労や戦略にも共感しやすくなります。
- コミュニティを通じたつながり
- 同じ企業を応援する仲間同士で交流が盛り上がり、新たなビジネスパートナーや友人関係が生まれることも。
- 自己実現の手段として
- 好きなブランドを自分が育てる手応えがあり、社会貢献や自己実現の手段にもなります。
5. メリット・デメリットや課題
メリット
- 企業と深く関われる:モノづくりや企画段階からの参加が可能。
- リターンの可能性:将来的に企業の株価が上昇すれば、経済的な利益も得られる。
- ブランドコミュニティの一体感:共感を軸にしたファンコミュニティが広がる。
デメリット・課題
- 投資リスク:当然ながら投資である以上、資金が戻らない可能性もある。
- 情報の非対称性:上場企業とは異なり、情報公開が限定的な場合もあり得る。
- ロイヤルティバイアス:ファンであるがゆえに、冷静な投資判断ができなくなるリスクがある。
6. 今後の展望
インベスタマーの概念は、今後ますます広がっていくと考えられます。特に以下の点がポイントとなるでしょう。
- プラットフォームの拡充
- 株式投資型クラウドファンディングや専用のマッチングサイトなどが普及し、誰でも簡単にインベスタマーとして参加できる環境が整備される。
- ブランドのストーリー重視
- 企業側が自社のビジョンやストーリーをより魅力的に発信することで、多くの共感者(インベスタマー)を集める動きが強まる。
- SNSとの連携強化
- リアルタイムで情報が交換できる場として、SNSやコミュニティプラットフォームとの連携がさらに進化。
- 法制度の整備
- 既存の金融商品取引法や資金調達のルールとの兼ね合いで、今後はより柔軟な仕組みが検討され、法整備が進む可能性がある。
まとめ・結論
ここまで、インベスタマーの概要や特徴、従来の投資との違い、そしてそのメリット・デメリット、将来の展望について解説してきました。大切なのは、投資によるリターンだけでなく、企業と“共感”を軸に長期的な関係を築き、共に成長していくという発想です。
インベスタマーという概念は、消費と投資の境界を取り払い、「愛着」や「共感」によって企業を応援しながらリターンを得るという、新時代ならではの仕組みと言えます。これから投資を始めたい方だけでなく、既に投資経験のある方にとっても、新しい視点として取り入れてみる価値があるでしょう。
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