
昨今、モバイルバッテリーによる火災事故が相次いで報告されています。
海外では韓国の航空機で火災が発生し、日本国内でも電車内でボヤ騒ぎが起きるなど、決して他人事ではありません。
今やスマートフォン、ワイヤレスイヤホン、ゲーム機、ノートPCなど、ほぼすべての電子機器にモバイルバッテリー(リチウムイオン電池)が使われています。
ではもし――
飛行機や電車でモバイルバッテリーが発火した場合、誰が責任を問われるのでしょうか?
この記事では、
法律・保険・現実的な運用の観点から、分かりやすく整理します。
モバイルバッテリー火災の責任は誰にあるのか?
結論から言うと、
状況によって責任の所在は変わります。
日本では主に、次の3者が検討対象になります。
- バッテリーの持ち主(利用者)
- 製造・販売したメーカー
- 鉄道会社・航空会社
原則:持ち主(利用者)の責任が問われるケース
責任を問われやすい例
以下に該当する場合、利用者の過失が認められる可能性があります。
- バッテリーの所有者が特定できる
- 安価な非認証品(PSEマークなしなど)
- 落下・破損・改造したまま使用
- 異常発熱を認識しながら使用を続けた
この場合、
**民法709条(不法行為責任)**に基づき、
- 電車遅延による損害
- 車両・機内設備の修理費
- 乗客対応コスト
などを損害賠償として請求される可能性があります。
利用者の責任が問われにくいケース
一方で、次のような場合は事情が異なります。
- 正規品・認証品を通常使用していた
- 外見上の異常がなかった
- 内部不良など突発的な発火
この場合、
利用者に過失はないと判断される可能性が高く、
次に問題になるのは「メーカー責任」です。
メーカーの責任(製造物責任)はどうなる?
製品自体に欠陥があった場合は、
**製造物責任法(PL法)**が適用される可能性があります。
想定される欠陥
- 設計不良
- 製造工程のミス
- 危険性の説明不足
ただし現実問題として、
- 海外ノーブランド
- 販売元不明
- 通販で購入した格安品
こうした製品は、
実際にメーカーへ責任追及するのが非常に難しいのが実情です。
鉄道会社・航空会社の責任は?
原則
- 事業者は「安全配慮義務」を負う
- しかし利用者の私物が原因の場合、原則として事業者に過失はない
そのため、
鉄道会社や航空会社が全面的に責任を負うことは通常ありません。
例外的に責任が問われる可能性
- 明らかに危険な行為を放置した
- 異常申告を受けたのに対応しなかった
- 禁止物の持ち込みを黙認していた
このような場合は、
事業者側にも一部責任が及ぶ可能性があります。
実際の補償は「保険 → 求償」という流れ
鉄道会社・航空会社は、
巨額の損害保険に加入しています。
実際の流れ
- まず事業者の保険で被害をカバー
- 原因が特定されれば
👉 利用者やメーカーに求償(後から請求)
つまり、
表では保険、裏では原因者負担
という構造です。
今後、事故は増えるのか?
残念ながら答えは YES です。
理由としては、
- バッテリー搭載製品の爆発的増加
- 高容量・高エネルギー化
- 安価な粗悪品の流通
- リチウムイオン電池の構造的リスク
**「確率は低いがゼロではない事故」**が、
社会全体で確実に増えていく構造になっています。
今後必要だと思われる現実的な対策
この問題は「怖がりすぎ」ではありません。
むしろ、備えるべき段階に入っていると言えます。
考えられる対策
- PSE・認証制度の厳格化
- 高容量バッテリーの申告制
- 飛行機での頭上棚保管禁止の徹底
- 耐火ポーチの普及
- 利用者への注意喚起強化
- 火災時の初動マニュアル見直し
特に航空業界では、
今後さらに持ち込みルールが厳しくなる可能性があります。
まとめ:これは「誰でも当事者になり得る問題」
モバイルバッテリー火災は、
- 特別な人だけが起こす事故ではない
- 普通に生活している人も当事者になる可能性がある
という点が、最も怖いところです。
利便性の裏にあるリスクを理解し、
「安全な製品を選ぶ」「異常を感じたら使わない」
この意識が、今後ますます重要になるでしょう。


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