
「くず粉(葛粉)」は、マメ科のつる植物・葛(くず)の根に含まれるデンプンを、水でさらしながら精製して作る伝統食材。動画「四百年の伝統を誇る 宝達くず」では、石川県・宝達志水町の特産「宝達くず」ができるまでが紹介されています。本記事では動画の流れを軸に、奈良・吉野の資料や公式情報も参照しつつ、くず粉づくりを分かりやすく解説します。 YouTube+2農林水産省+2
くず粉とは?“本葛”との違い
- くず粉(葛粉):葛根のでんぷんを水で晒し、精製して作る粉。
- 吉野本葛:奈良・吉野地方で、葛でんぷん100%を「吉野晒し(寒晒し)」で精製した伝統的なくず粉の呼称。一般の「葛粉」にはサツマイモやトウモロコシ等のデンプンを混ぜた製品が流通することもある点が異なります。 www3.pref.nara.jp
くず粉を作る季節
製造は基本的に冬。地上部が枯れた後、根にデンプンが蓄えられる時期に掘り取り・精製を行います。寒いほど精製に適し、透明感と上品な粘りが生まれます。 kudzu.jp+1
必要な道具(代表例)
- 鍬・スコップ(葛根の掘り取り)
- 洗浄用の水槽/桶
- 粉砕機(または叩き潰して繊維化)
- 布袋・ざる(デンプン乳のろ過)
- 沈殿槽(大桶)
- 乾燥棚(自然乾燥用)
(※地域や工房により設備は異なります) kudzu.jp+1
プロセス全体の流れ(宝達くずの映像+吉野の資料を統合)
1) 葛根の収穫(冬)
葛が枯れた冬に根を掘り出す。大きい根は非常に硬く、重労働。 kudzu.jp
2) 洗浄・選別・粉砕
掘り出した根を洗って土や泥を落とし、粉砕機で繊維状に崩す(手作業の地域も)。繊維に白いデンプン粒が絡んでいる。 kudzu.jp
3) もみ出し(抽出)
砕いた根を水中でよくもみ、繊維からデンプンを「乳化液(デンプン乳)」として引き出す。布袋でこし、繊維とデンプン乳に分離。 kudzu.co.jp
4) 沈殿・上澄みの交換(晒し)
デンプン乳を沈殿槽(大桶)で静置し、上澄みやアク・不純物を除去→清水に入れ替え。これを何度も繰り返す伝統工程が「吉野晒し(寒晒し)」。地域差はあるが10日前後〜数週間かけることもあり、厳冬期の冷水で行われる重労働。 農林水産省+1
5) 底ざらい/床掘り
沈殿槽の底に厚く残った白いデンプン層を切り出す(床掘り)。水分を多く含み重い。 オーサワジャパン
6) 成形・乾燥
切り出した生葛(ウェットケーキ)を豆腐大に小割りして、1〜3か月ほど自然乾燥。十分に水分が抜け、乾いた板状/塊状の「本葛」に。 農林水産省+1
7) 仕上げ・選別
用途に応じて砕いたり、ふるいにかけ、**くず粉(葛粉)**として出荷。透明感・粘度・口当たりはこの晒し〜乾燥の丁寧さで決まる。 農林水産省
参考映像:石川県・宝達志水町の「宝達くず」の工程紹介(収穫〜精製の全体像が分かる)。 YouTube
できあがった「くず粉」の使い道
“良いくず粉”を見極めるポイント
- 原料表示:100%葛でんぷん(吉野本葛など)か、他でんぷん混合かを確認。 www3.pref.nara.jp
- 透明感と粘性:加熱で上品な透明感とのど越しの良い粘りが出るものは、伝統的な晒しと乾燥が丁寧。 農林水産省
補足:宝達くずの歴史メモ
宝達くずは450年以上の歴史を持つ特産。金鉱山の労働者の健康を支える漢方としての起源があり、冬に川の水が茶色く染まると「くず作りが始まった」と季節を告げたといいます。 hodatsushimizu.jp
まとめ(要点)
- くず粉づくりは冬に行う重労働の伝統技。掘る→洗う→砕く→晒し(沈殿・上澄み交換の反復)→床掘り→自然乾燥で完成。 kudzu.jp+1
- 「吉野晒し」は清水で長期間さらす要の工程で、透明感・粘りを左右。 農林水産省
- “本葛”は**葛でんぷん100%**の伝統製法品。表示と透明感/粘性をチェック。 www3.pref.nara.jp
参考資料・映像
- 動画:四百年の伝統を誇る 宝達くず(宝達志水町)— 工程全体の流れ。 YouTube
- 解説:吉野本葛の製造工程(天極堂)— 粉砕〜晒し〜乾燥までの詳細。 kudzu.jp+1
- 公的解説:にっぽん伝統食図鑑(MAFF)— 吉野晒しの工程・期間や乾燥の記述。 農林水産省
- 歴史:宝達くず(宝達志水町公式)— 450年以上の歴史と地域の背景。 hodatsushimizu.jp
- 用語・定義:奈良県 食文化資料(PDF)— 本葛と混合品の違い。 www3.pref.nara.jp
- レシピ:葛餅(MAFF うちの郷土料理)、葛湯(Arrowroot tea)。 農林水産省+1
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