毎日のインスリン注射、血糖測定、通院…1型糖尿病のお子さんを育てるご家庭では、医療費だけでなく時間的・精神的な負担も大きいですよね。
実は、そんなご家庭を支援するために国が用意している税金控除制度がいくつかあります。しかし、これらは申請しないと一切受け取れない制度です。知らないまま毎年数万円〜数十万円を損しているご家庭が非常に多いのが現状です。
この記事では、1型糖尿病のお子さんがいるご家庭が受けられる税金控除をわかりやすく解説し、申告漏れを防ぐための注意点もお伝えします。
まずは受けられる控除の全体像を把握しておきましょう。大きく分けて以下の3つです。
これらはすべて組み合わせて申請できるため、合計すると年間で数万円〜十数万円の節税になるケースも珍しくありません。それぞれ詳しく見ていきましょう。
1型糖尿病のお子さんをお持ちのご家庭では、「特別児童扶養手当」を受給しているケースが多くあります。この手当を受給しているお子さんは、税務上の「障害者」として認められるため、親御さんの確定申告で障害者控除を申請できます。
1型糖尿病は2級認定されるケースが多いとされており、その場合は「一般の障害者」として27万円の控除が受けられます。
障害の程度や同居の有無によって控除額が変わります。
| 区分 | 対象の目安 | 所得税控除額 | 住民税控除額 |
|---|---|---|---|
| 一般の障害者 | 特児2級相当など | 27万円 | 26万円 |
| 特別障害者 | 特児1級相当など | 40万円 | 30万円 |
| 同居特別障害者 | 特別障害者と同居 | 75万円 | 53万円 |
「うちの子は障害者手帳を持っていないから対象外では?」と思われる方も多いのですが、それは誤解です。
1型糖尿病は内部障害として身体障害者手帳が取得しにくい疾患ですが、以下のいずれかがあれば障害者控除を申請できます。
手帳がなくても諦めないでください。まずは市区町村の福祉窓口に相談してみましょう。
所得が約420万円(税率20%)の場合を例に計算してみます。
特児2級(一般障害者・27万円控除)の場合
特児1級(同居特別障害者・75万円控除)の場合
1型糖尿病の治療では、インスリン製剤・注射針・血糖測定器の消耗品・CGMのセンサーなど、毎月かなりの医療費がかかります。年間で10万円を超えた分は医療費控除として申請でき、所得税・住民税が軽減されます。医療費控除額=支払った医療費合計−助成などで補填された額−10万円
※所得200万円未満の場合は10万円ではなく「所得×5%」が足切りラインになります。
対象になるものとならないものをしっかり把握しておきましょう。
✅ 対象になる費用
❌ 対象にならない費用
1型糖尿病は「小児慢性特定疾病」の対象疾患です。助成を受けている場合、補填された金額を差し引いて計算する必要があります。助成を受けていても自己負担分が残っている場合は、その分について医療費控除を申請できます。
2024年4月から「選定療養」制度が拡充され、インスリン治療をしていない方でも医療機関経由でCGMセンサーを自費購入できるようになりました。この場合、医師の指示のもとで購入したものに限り医療費控除の対象になります。自己判断でネット購入したものは原則対象外ですので注意が必要です。
16歳以上のお子さんがいる場合、障害者控除に加えて扶養控除(38万円)も同時に申請できます。両方を合わせると控除額は大幅にアップします。
例:16歳以上・同居特別障害者(1級)の場合扶養控除38万円+同居特別障害者控除75万円=合計113万円の控除
なお、16歳未満のお子さんは通常の扶養控除の対象外ですが、障害者控除は16歳未満でも適用可能です。これは国税庁が明確に認めているルールですので、小さなお子さんがいるご家庭も必ず申請してください。
年末調整や確定申告で自分から申請しない限り、一切適用されません。会社が自動的にやってくれることはありません。これが申告漏れが多発する最大の原因です。
会社員の方は、毎年もらう源泉徴収票の「障害者の数」欄を確認してください。
心当たりのある方は過去の源泉徴収票をすぐに確認しましょう。
申告し忘れていても、過去5年分まで遡って還付申告が可能です。2026年時点では2021年分まで申請可能
たとえば特児2級・所得約420万円(税率20%)で5年間申告し忘れていた場合、以下の計算になります。約80,000円×5年=約400,000円が戻ってくる
「知らなかった」では済まされないほどの金額になる可能性があります。心当たりのある方は今すぐ確認してください。
申告前に以下を用意しておきましょう。
STEP 1 国税庁「確定申告書等作成コーナー」にアクセスする
STEP 2 マイナンバーカードでログインする
STEP 3 所得・控除の入力画面で「障害者控除」を選択し、区分(一般・特別・同居特別)とお子さんの氏名・続柄を入力する
STEP 4 医療費控除の入力画面で1年分の医療費明細を入力する
STEP 5 内容を確認して送信する
e-Taxの場合、認定通知書のアップロードや提出は不要です。ただし税務署から後日確認を求められる場合に備えて、自宅で5年間保管しておいてください。
e-Taxが難しい場合は税務署の窓口でも申請できます。確定申告シーズン(2〜3月)以外は比較的空いているので、4月以降に行くとスムーズです。事前に電話で予約が必要かどうか確認してから行くと安心です。
持ち物チェックリスト
| 書類 | 保管期間 |
|---|---|
| 特別児童扶養手当 認定通知書 | 5年間 |
| 医療費の領収書 | 5年間 |
| 源泉徴収票 | 5年間 |
| 確定申告書の控え | 5年間 |
この記事でご紹介した障害者控除・医療費控除・扶養控除以外にも、ご家庭の状況によってはさらに受けられる控除がある場合があります。
「自分の場合はどうなんだろう?」「他に使える制度はないかな?」と思ったら、一人で抱え込まずにぜひ専門家に聞いてみてください。難しく考える必要はありません。
🏛️ お近くの市役所(福祉窓口)
障害者控除対象者認定書の発行や、各種手当・助成制度についての相談ができます。「1型糖尿病の子どもがいるのですが、使える制度を教えてください」と伝えるだけでOKです。
🏢 お近くの税務署
確定申告の書き方や、どの控除が使えるかなど税金に関する相談を無料で受け付けています。「控除を申告し忘れていたかもしれない」という相談も気軽に受け付けてもらえます。
窓口に行くのが難しい場合は電話での相談も可能です。一つの相談が、毎年数万円〜数十万円の節税につながることもあります。ぜひ気軽に足を運んでみてください💪
💉 Q. 特別児童扶養手当を受給していれば必ず障害者控除を受けられますか?
A. 受給していれば原則として障害者控除の対象になります。ただし手当の認定通知書または市区町村発行の「障害者控除対象者認定書」が必要です。手帳がなくても申請できますので、まずは証明書類を確認してみてください。
🏥 Q. 身体障害者手帳を持っていないと申請できませんか?
A. 手帳がなくても申請できます。特別児童扶養手当の認定通知書があれば証明書類として使えます。手帳も通知書もない場合は、市区町村の福祉窓口で「障害者控除対象者認定書」を発行してもらえます。
📅 Q. 何年も申告し忘れていましたが今から申請できますか?
A. 過去5年分まで遡って還付申告が可能です。2026年時点では2021年分まで申請できます。e-Taxまたは税務署の窓口で手続きできます。
💊 Q. インスリンや注射針の費用は医療費控除の対象になりますか?
A. なります。インスリン製剤の薬代、注射針・注射器の購入費、血糖自己測定器の消耗品(測定チップ・穿刺針など)はすべて対象です。領収書は必ず保管しておきましょう。
📱 Q. CGMやFreeStyleリブレのセンサーも控除できますか?
A. 医師の指示のもとで選定療養として購入したものは対象になります。自己判断でネット購入したものは原則対象外です。領収書と医師の指示があるかどうかを確認してください。
🏢 Q. 会社の年末調整で申告すればいいですか?
A. 年末調整でも障害者控除は申告できます。ただし医療費控除は年末調整では申告できないため、別途確定申告が必要です。また年末調整で障害者控除を申告すると会社に障害の情報が伝わります。それを避けたい場合は確定申告で申告する方法もあります。
💰 Q. 特別児童扶養手当の収入も確定申告に含める必要がありますか?
A. 不要です。特別児童扶養手当は所得税・住民税ともに非課税です。確定申告で収入として申告する必要は一切ありません。
🖥️ Q. e-Taxで申告する場合、認定通知書を送る必要がありますか?
A. e-Taxの場合、認定通知書のアップロードや郵送は不要です。申告画面で障害者の区分とお子さんの氏名・続柄を入力するだけで申請できます。ただし税務署から後日確認を求められる場合に備えて、認定通知書は自宅で5年間保管しておいてください。
1型糖尿病のお子さんがいるご家庭が受けられる主な控除をまとめると以下の通りです。
これらの控除は申請しなければ一円も戻ってきません。まずは手元の源泉徴収票の「障害者の数」欄を確認することから始めてみてください。空欄になっていたら、申告漏れの可能性大です。
過去5年分まで遡って申請できますので、今からでも十分間に合います。e-Taxならマイナンバーカードとスマートフォンがあれば自宅で30分程度で完了します。大切なお子さんのために使える制度はしっかり活用して、家計を守っていきましょう💪